飴・キャンディ研究所

キャンディって何?

日本の歴史における
「キャンディ」

キャンディは、「あまい(甘い)」の「あま」から母音交替した言葉だと言う説や、
「あまめ」または「甘み(あまみ)」の約転と言う説があります。
キャンディが日本の歴史に登場したのはとても古く、日本書紀にも記述があるほどです。

このキャンディは水飴を指しており、「麦もやし」や「米もやし」を用いて作られ、
奈良・平安時代のキャンディは非常に高価で調味料や薬用として使われていたそうです。
今で言うところの「米飴」や「麦芽水飴」になります。

また、水飴の栄養は高く評価され、合戦や籠城時に陣中糧食として考えられたり、
子育て幽霊という語り継がれている伝説の中にもキャンディは登場し、
消化がよく栄養に富み珍重されていたことが分かります。

今でも全国各地に昔ながらの製法を守って作る水飴(米飴や麦芽水飴)があるのは
この頃からの名残りかもしれません。

江戸時代に入るとさとうきびから砂糖が生成され、和菓子文化が最盛期を迎えます。
この頃、ポルトガルから日本に金平糖がもたらされ、今と同じような硬いキャンディが登場し始め、
種類も増え、製造する人や店も出てきます。

目の前でリクエストに応えてキャンディを伸ばしたり、
切ったりしてあっという間に美しく精巧な形を作り出す、
「飴細工」もこの頃に発展していきます。
この頃から庶民も楽しめるお菓子・嗜好品としての飴が誕生します。

「キャンディ」ってどんなもの?

キャンディを作る場合、基本素材は砂糖と水飴。
この2つを煮詰め、風味をつけるための香料・鮮やかな色合いを付ける着色料などを加えて成形し固めます。
煮詰める温度や添加するもの、水分量によって、キャンディは大きく2つに分類することが出来ます。

ハードキャンディ

高温で炊き上げ、水分量が2%程度のかたい仕上がりのもの。舐めてゆっくり時間をかけて楽しむタイプのキャンディです。フルーツの風味・爽やかなミントの風味が一度に楽しめる「ドロップ」や、くるくる巻かれた飴や丸い飴が棒にささった「棒付きキャンディ」、どこを切っても同じ柄が出てくる「組み飴」、小さい角が沢山ついた「金平糖」などがハードキャンディになります。

ソフトキャンディ

低温で炊き上げ、水分量が6%以上の柔らかい仕上がりのもの。舐めるだけでなく、噛んで風味と食感を楽しむタイプのキャンディです。モチモチした食感がたまらないグミや、ミルクの甘さとコクが楽しめるキャラメル、ふんわり柔らかい口当たりが特徴のマシュマロ、泡立てた卵白やゼラチン・ナッツやドライフルーツを加えた柔らかく歯に張り付くような食感のヌガーなどがソフトキャンディになります。

甘さタイプで分けた場合も2つに分かれます。

シュガータイプ

砂糖を使用して甘さを表現したキャンディです。

材料も、作り方もシンプルなキャンディですが、砂糖と水飴の比率で出来上がりが変わります。機械で作るキャンディの比率は、砂糖約6:水飴約4が多く、昔ながらの手作りのキャンディは、砂糖約8:水飴約2が多いです。砂糖と水飴の比率差によって、噛んだ時のキャンディの割れ方が異なります。砂糖が多く、煮詰める温度が高いと、歯切れがよく、口の中でキャンディを噛んだ時、カリッ、カリカリと割れやすいです。

どんなキャンディを作るか、どんな釜を使って炊きあげるかなどの条件によって、砂糖と水飴の比率を調整し、キャンディ本来の味が引き立つように日々努力しています。

シュガーレスタイプ

砂糖を使わず、キシリトールや還元水飴などの甘味物質(糖アルコール類)を使用したキャンディです。

糖アルコールは砂糖や水飴とは異なる特長を持っており、体内で消化・吸収されにくくカロリーが少ないことや、微生物の栄養源にもなりにくいので虫歯の心配がいらず、近年多くの食品に使用されています。
※シュガーレス:ショ糖やブドウ糖、果糖などの糖類が法令上、食品100gあるいは飲料100ml中に0.5g未満のことを言います。

シュガーレスと言っても甘くないという訳ではなく、美味しいキャンディが出来上がります。

キャンディの製法

デポジット製法

原料を高温で溶かしてから型に流し込み、冷やし固める製法です。
キャンディの表面がつるつるして舐めやすい仕上がりになり、キャンディの表面をよく見ると原料が流し込まれた跡が丸く残っています。

スタンピング製法

凹凸のある金型の間にロープ状に引き伸ばしたキャンディを通して、型抜き成形する製法です。
球形のように立体感のある丸みを帯びた形が作れます。
型の形状によって球やハートなどいろいろな形を作ることが出来ます。高速で連続的に自動成型することが可能なので、大量生産に向いています。

代表的なキャンディの種類

ハードキャンディとソフトキャンディには色々な種類があります。

組み飴

いろいろな色の飴を重ねて(組んで)作りあげる組み飴。
平面の図を立体的に組み上げるため、職人の技と経験が光ります。出来上がりサイズは小さいですが、組み上げている時は直径30cmくらいの大きな飴になり、繊細な技術と共に力も必要になります。

組み飴を作る時は、1人ではなく複数人での共同作業になります。
柔らかい飴は何もしないでおくとゆっくり垂れて、形が変形してしまうため、パーツごとに分けて形を作ってもそのままにしておくことが出来ません。全てのパーツを作り上げるまでの間、それぞれのパーツの形が崩れないように、飴を転がし続けたり、道具を使って形を保たないといけません。

飴は冷えて固まってしまうと形を変えることが難しくなるため、時間との闘いです。
息のあった職人同士が声を掛け合いながら、組み上げていく姿は圧巻です。組み上げる時はパーツの向きを1つでも間違うと失敗となるため、慎重に組み飴の基となる図案を見ながら、かつ迅速に組み上げていきます。

組み飴は沢山の職人の手間と愛情がこもった、どこを切っても同じ図柄が続く、目でも舌でも楽しむことが出来るキャンディです。

オリジナル性があり、職人の手作りのため、出来上がる量もさほど多くないので、結婚式や企業のノベルティとしても人気が高いです。

飴細工

平安時代に京都に東寺が建立されたときに、中国から渡ってきた飴職人が、お供え物として作ったのが始まりと言われています。

基本的な色を施した晒し飴を丸め、棒に刺した後、和ばさみで切ったり伸ばしたりした後、仕上げに食紅などで彩色していきます。短時間にお客様のリクエストに合わせて作り上げる見事な技は見ている人を引き付けて離しません。

※晒し飴:水飴を炊き、引いて空気を含ませた白い飴。(透明な飴を使って作ることもあります。)

3分程度という短時間で魅力あふれる飴細工という芸術品を作りだすための道具は、思った以上にシンプルです。屋外で行うため道具は最小限でコンパクトにまとめられています。この道具と職人の感性と技術力があれば、場所を選ばず、たくさんの人の前で制作し、感動を届けることが出来ます。

職人の数は多くはありませんが、絶やしてはいけない芸術作品である「飴細工」。これからも職人が生み出す技で私たちを引き付けていくに違いありません。

金平糖

小さな突起が特徴で、戦国時代にポルトガル宣教師によって日本に運ばれたことで知られる金平糖。

極小の核となる飴粒や、もち米を砕いたイラ粉を大釜に入れ、糖液をまぶし、かき回しながら加熱をすると、糖液は徐々に固まって大きくなり、表面に角状の突起が出来ます。1cmの大きさになるのに約16~20日くらいの日数を要します。

金平糖は出来上がるまでに何日もじっくり、ゆっくりと時間をかけて作り上げることから結婚式のプチギフトにも使われることも多い縁起物です。二人が長い年月をかけて家庭を築き上げる過程が金平糖作りと共通するからと言われています。

金平糖は小さいので食べるのは一瞬ですが、完成するまでには多くの時間と職人の愛情と手間が掛けられています。

棒付きキャンディ

木製や紙製・プラスチックなどの棒に様々な飴が付いている棒付きキャンディ。
花・果物・動物などの形を模した飴や、渦巻き状に巻いた飴、組み飴など多種多様な飴が組み合わされています。アメリカなどではロリポップと呼ばれています。

棒付きキャンディで思い出すのは、丸くて色々な味があり、誰でも知っている有名なあのキャンディを思い浮かべる方が多いと思います。小さなお子様にとってはキャンディを誤って飲み込んでしまう心配がなく、ゆっくりペロペロ舐めて楽しめるキャンディです。

ハロウィンやクリスマス、バレンタインデーやホワイトデーなどのイベントで、カラフルな棒付きキャンディ、形が可愛いキャンディ、面白い棒付きキャンディなど一緒に写真を撮りたくなるキャンディです。

有平糖

金平糖と並んでポルトガルの宣教師によって戦国時代の日本に初めて輸入されたハードキャンディと言われ、有平糖の語源はポルトガル語でアルフェロアと言われています。

有平糖の主原料は砂糖。砂糖の結晶化を防止し、飴細工に必要となる粘度を確保するだけの量しか水飴を使わないことが他のハードキャンディとの違いだと言われています。
飴が冷えきらないうちに引き伸ばしたり、着色をしたりして、精巧な細工や花・果物を模した飾り菓子(有平細工)が代表的なものと言えます。

季節ごとの彩色や細工を凝らしたものは、お茶席での添え菓子として用いられることが多く、噛む音がしないよう、糖化した有平糖が好まれます。本当に細やかな配慮です。
※糖化:砂糖が吸湿した後、再結晶化(糖化)する現象。

たんきり飴

生姜やごま、大豆などを混ぜて痰切りの効果があるという説や、飴を包丁で切る“タンタン”という音から名前がついたなどの説があるたんきり飴。製造方法や風味から冬期限定で販売されていることが多い飴です。

有名なものは「川崎大師名物のたんきり飴(現在はたんきり飴という名前を使わずにさらし飴やとんとこ飴と言う名前で販売されています)」や、愛知県豊橋市の安久美神戸神社で行われる“鬼祭り”で赤鬼が撒く白い粉がまぶされたたんきり飴があります。このお祭りではたんきり飴を食べると厄除けとなり、健康になると言い伝えられているそうです。

キャンディに出来ること

ゆっくり、じんわり溶けて広がるキャンディは、口の中で留まりながら風味や香り、効能を楽しませてくれます。

添加したいものに合わせて、ハードタイプにするかソフトタイプにするかの選択ができ、可能性は広がります。ハードキャンディであれば、水分量が2%前後なので、長期保存でき、もしもの時もキャンディを舐めればアタマやココロをそっと癒してくれる、小さいけれど頼れる存在です。

舐めると口の中の熱を吸収し、冷感を感じるキャンディがあるならば、逆に温感を感じるキャンディがないのはどうしてなんだろう?など、キャンディで出来ること、実現したいことはまだまだあります。

食べるシーン、添加したい原料、形状、固めかたなどこれからも様々な可能性がキャンディの需要を高め、付加価値を生み出すと考えています。